無線LANのパラメーターの設定には深い知識が求められます。また、無線LANの環境に応じてパラメーター値を調整する必要があります。この記事では、無線LAN環境のパフォーマンスを向上させるためのテクニックについて紹介していきます。
①ブロードキャストとマルチキャストをドロップする
デフォルトでは、ブロードキャストとマルチキャストはデータレートの最低値で転送されます。非常に遅い速度でトラフィックが送信されるため、データを送信し終えるのに長い時間を要します。つまり、エアタイムを多く消費してしまうということです。可能な限り、ブロードキャストとマルチキャストはブロックしておいた方が良いでしょう。
②低速レートを無効にする
低速レートが有効な場合、遠くから接続してくる低いSNRのクライアントデバイスの通信も許可することになります。非常に遅い速度でトラフィックが送信されることを許可することになるため、エアタイムを多く消費してしまいます。低速レートを無効にする場合、遠くから接続してくる低いSNRのクライアントデバイスの通信は許可されなくなります。カバレッジエリアに十分なアクセスポイントが足りている場合は、低速レートを無効にすると良いでしょう。データレートの値については、クライアントの環境にもよりますが、12~24Mbps程度が推奨されます。
③SSIDの数を少数に制限する
一般的にSSIDは4つまでに制限するべきです。SSID数に応じてビーコンフレームも増加します。特に通信が無い状態であってもビーコンフレームの様な管理フレームだけでエアタイムを逼迫させてしまう恐れがあります。
④エアタイムフェアネスを有効にする
接続しているクライアントの中に低速のクライアントデバイスがある場合、通信が開始できるまでの待ち時間が長くなってしまい、無線LAN環境全体のパフォーマンスが低下してしまいます。エアタイムフェアネスを有効にすることで、待ち時間を平等に区切ることができます。結果として高速のクライアントデバイスのスループットが改善することが期待できます。但し、低速のクライアントデバイスのスループットは低下します。
⑤バンドステアリングを有効にする
無線LANネットワークでは2.4GHz帯と5GHz帯のどちらかが利用できます。(現在では6GHz帯も追加されました)2.4GHz帯はノイズ源が多く、利用できるチャネルの数(3個)も少ないため、無線通信に最適な環境とは言えません。5GHz帯はノイズ源が少なく、利用できるチャネルの数(19個)も多いため、可能な限り5GHz帯を利用することが推奨されます。バンドステアリング機能を有効にすると、クライアントデバイスが無線LANに接続する際に5GHz帯を優先して利用するように誘導出来ます。
⑥クライアントバランシング機能を使う
クライアントバランシング機能を有効にすることで、アクセスポイント同士の負荷を分散させることが可能です。アクセスポイント間でトラフィック負荷やクライアントの接続数などの情報を交換し合い、802.11k、802.11vを利用してクライアントに最適なアクセスポイントにローミングさせるように誘導させます。これはクライアント側で802.11k、802.11vがサポートされていることが前提となります。※クライアントバランシング機能についてはメーカーによっては実装されていない場合があります。
⑦マルチキャストtoユニキャスト機能を使う
マルチキャストトラフィックはサポートされるデータレートの最低値で送信されます。そのため、映像データなどをマルチキャストで送信するとエアタイムをすぐに逼迫させてしまいます。マルチキャスト to ユニキャスト機能を有効にすると、マルチキャストトラフィックも通常のデータトラフィックと同じデータレートで送信されるようになります。マルチキャストトラフィックを高いデータレートで転送できるようになるため、エアタイムの消費を抑制することが出来ます。
⑧WMMを有効にする
WMMを有効にすると、無線区間(AP→クライアント)のトラフィックの待ち時間(DIFSとバックオフタイム)を短くすることができます。優先度が高いトラフィックほどフレーム送信の間隔が短かくなり、低優先度のフレームと比べて短時間で送信することができます。この仕組みをEDCA (Enhanced Distributed Channel Access)と呼びます。音声やWEB会議など、特定のアプリケーションを優先するように設定することが推奨されます。